時代は2042年、世界経済はかつてないほど急速に変化していた。企業はもう、金銭的な配当を社員や消費者に分け与えるだけではなく、次なる「配り物」として株を配る時代が到来した。
その先駆者となったのは、世界最大のIT企業「ヴァーチャル・フロンテス」。毎年テレビ中継が行われる「国民総株主総会」で、CEOのマエゾノ・ユサクは新しい試みを発表した。
「お金を配るのは、もう古い。これからは株を配る時代だ」と彼は宣言した。
その言葉が響くと、会場内の騒音が一瞬で静まり返った。来場者たちは、何を言っているのか理解できない顔をしていた。しかし、ユサクは続けた。
「お金はあくまで一時的な価値であり、インフレや市場の変動に影響される。しかし、株には企業の未来が込められている。私たちが目指すのは、未来を分け合うことだ。」
その後、彼は具体的な方法を説明した。毎年、ヴァーチャル・フロンテスの株が数百万枚、選ばれた社員や消費者に無償で配布されるというのだ。金額に換算すれば、何千万円、何億円にもなるような価値のある株式だ。しかし、その価値は時間とともに増大し、株主たちは企業の成長と共に利益を享受することができる。
「お金は消えていくが、株は残る」とユサクは微笑んで締めくくった。
その言葉が世界中に広まり、すぐに他の企業も追随するようになった。人々はもう、現金を手にすることが喜びではなくなった。代わりに、自分が持つ株の価値が上がることを楽しみにするようになった。
だが、株の配布には新たな問題も生じた。もはやお金をもらうことが当たり前となった人々は、株を受け取ってもその価値を理解できず、うまく活用できない者が増えていった。多くの人々は、「株の売買」に馴染みがないまま、企業の成長に貢献する意識も薄れていった。
そんな中、若きエンジニアのナツメは、株式の持ち方について新たなアプローチを提案する。彼は、株の保有者が企業の目標達成にどれだけ貢献しているかを評価し、その貢献度に応じて株の価値を動かすシステムを作り上げた。つまり、株を所有しているだけでなく、その活動が企業にどれだけ利益をもたらすかが株価に直結する仕組みだ。
ナツメの提案は瞬く間に世界中の企業に採用され、株式の保有者たちはただの受け手から、積極的な貢献者へと変貌していった。消費者たちは製品のフィードバックを通じて、社員たちは新しいアイデアを提供することで、株価の上昇に寄与するようになった。
株を配るという行為は、もはや単なる「分け前」の配布ではなく、全員が共に企業の未来を作り上げるための新しい社会的な責任へと変わった。そして、誰もがその「未来」の一部となり、企業もまたその成長の過程で得た利益を共に享受する世界が広がっていった。
マエゾノ・ユサクは、会場の隅で静かにその様子を見守っていた。彼が築いた新しい「株を配る時代」が、どんな形で進化していくのか、その未来がどれほど輝かしいものになるのか、誰にも予測できない。ただ一つ確かなことは、彼が言った通り、金銭を配る時代はもう終わったということだ。
そして、株を配ることが、未来を共に築くための鍵となったのだ。
– あとがき-
20代をはじめとする皆様方へ。
今世間を騒がしているカブアンドのサービスを利用するのか否か。
決めるのはあなた自身です。
儲かる儲からない以前に私は、面白そうだから利用することにします。
2042年後の未来への種まきにならんことを。